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【第一部 希少魚類の現状を知る】


(3)日本の希少海産魚の現状と絶滅の危機に瀕する
沖縄島泥質干潟に見られるハゼ類について
吉野 哲夫(琉球大学理学部)
淡水魚と比較して海産魚の生息状況を把握することは一般的に困難であり、対象とする種の生物学的情報は極めて少ないことから、希少種の評価選定・優先度にも苦慮される。このようなこともあり環境省のレッドリストでは汽水・淡水魚類のみを扱っている。一方、国際自然保護連合(IUCN)のレッドデータブックには4カテゴリー(CR, EN, VU, LR)(環境省のリストでは絶滅危惧及び純絶滅に相当)に含めるものとして日本にも分布する32種の海産魚類が示されている。その内訳はサメ類20種、ヨウジウオ7種、その他の硬骨魚類5種であり、特定の分類群に片寄るだけでなくその選定基準も納得できるものとは言えない。また旧水産庁編(1998)の「日本の希少な野生水性生物に関する基礎資料」では13種の絶滅危惧または危急海産魚類がリストされているが、いずれも旧カテゴリーに基づくものであり、資料的な意義は大きいが新しい基準での見直しが必要とされる。

希少海産魚類の選定基準として
(1)
種・亜種のレベルで日本固有または日本近海を主分布域としており現在絶滅に瀕しているかその危険性が大きいもの(例:有明海のシラウオ類、アオギス)
(2)
固有種・亜種ではないが日本では局所的な分布をしており現在絶滅に瀕しているかその危険性が大きいもの(例:チョウザメ、エツ、ムツゴロウ、トカゲハゼ)
(3)
地理的に孤立した地方集団でその場所で再生産しており、その集団が現在絶滅に瀕しているかその危険性が大きいもの(例:沖縄島および東京湾のトビハゼ)

などが考えられる。それぞれの現状をまとめるとともに、トカゲハゼ、トビハゼの2種については保全の課題を含めて詳しく説明する。

トカゲハゼ、は環境省のレッドリストに絶滅危惧 IA類(IUCNのCRに相当)として置付けられている、本種は熱帯アジアの泥質干潟に広く分布しているが、日本では沖縄島の中城湾にのみ見られる。最近10年間の生息個体数は1000〜2000と少なく、大部分は同湾内の北部と南部の2地域に局在する。そのうち北部地域では、大規模な埋め立て事業の進展に伴い個体数の急激な減少が見られたため、1995年以降人工干潟の造成・試験放流などの保全措置が取られている。このような保全措置の財政的な裏付けは埋め立て事業費から出ており、事業が終了後の保全措置に対する保証はない。また同湾では新たな大規模埋め立て計画が進行しており、南部地域でも生息環境が悪化してきている。
 トビハゼは日本から中国大陸にかけて分布しており、種レベルでは普通種と考えられる。しかし現在では日本各地の集団の分布は局所的であり、遺伝的交流も制限されていると推定される。とりわけ東京湾と沖縄島の干潟に分布する2地方集団についてはその傾向が顕著であり、「絶滅のおそれのある地域個体群」として保護する必要がある。最近行われたトビハゼの集団遺伝学的研究の紹介を行い、このような隔離された地域個体群を保護する意義について考察する。


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