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【第一部 希少魚類の現状を知る】


(2)日本の希少汽水魚類・通し回遊魚の現状―ハゼ亜目魚類を中心に−
鈴木 寿之(兵庫県立尼崎北高等学校)




■絶滅のおそれのあるハゼ類

平成11年2月28日に旧環境庁から公表された汽水・淡水魚類のレッドリストによれば絶滅の恐れのある種(絶滅危惧・類および・類)として76種類が挙げられている。このうちの46%にあたる35種がハゼ亜目魚類(以下ハゼ類)である。このようにハゼ類が多く選定された理由として特に琉球列島のハゼ類の知見が充実したことや、分布範囲が局限されており生息数の減少が起こりやすいなどが挙げられている。この35種のうち、琉球列島に分布する絶滅のおそれのあるハゼ類は26種と最も多く、次いで日本本土に8種、小笠原諸島に1種がそれぞれ分布する。また、淡水域を主な生息場所にする淡水性両側回遊魚が最も多く13種、次いで汽水域を主な生息場所にする汽水性両側回遊魚が11種、河口干潟や前浜干潟、汽水湖を主な生息場所にする汽水魚が9種、純淡水魚が2種である。琉球列島での内訳は、純淡水魚が2種、淡水性両側回遊魚が12種、汽水性両側回遊魚が10種、汽水魚が2種生息する。日本本土では、汽水性両側回遊魚が1種、汽水魚が7種生息する。小笠原諸島には淡水性両側回遊魚1種(オガサワラヨシノボリ Rhinogobius sp. BI)が生息する。




■主な種の現状と存続を脅かす原因


琉球列島のハゼ類
河川渓流域に生息するカエルハゼ、アカボウズハセ、ヨロイボウズハセ、ハヤセボウズハゼ、ツバサハゼ、エソハゼ、シマエソハゼなどは、もともと産地が局限されている上、生息数も極めて少ない。 橋梁の架け替え、護岸や遊歩道の整、導水管施設などの工事に伴う土砂の流入、多量の取水、業者による乱獲などにより、現在、一部の河川でほぼ絶滅状態であり、他の生息地での生息数も激減している。 湿地や細流に生息するタメトモハゼ、タナゴモドキなどでは、埋め立て、護岸工事、土砂の流入、カワスズメの繁殖、排水による水質汚染、堰堤による河川の分断、業者による乱獲などにより生息地の幾つかは消滅し、他の生息地での生息数も激減している。河川汽水域の主にマングローブ帯に生息するコマチハゼ、マイコハゼ、ミスジハゼ、クロトサカハゼ、ヒメトサカハゼ、アゴヒゲハゼは、もともと産地が局限されている上、生息数も極めて少ない。 これらの種については詳しい生息状況調査が必要である。クロトサカハゼ、ヒメトサカハゼ、ヤエヤマノコギリハゼ、ジャノメハゼなどは、後背地の圃場整備などに伴う土砂の流入により、ヒルギ類が枯死し、底質の砂泥化や硬化が生じるなど、生息地は荒廃し、生息数が激減している。干潟に生息するトカゲハゼとキララハゼは、埋め立てなどにより生息地の幾つかは消滅し、他の生息地での生息数も激減している。
日本本土のハゼ類
河口干潟や前浜干潟に生息するキセルハゼ、エドハゼ、クボハゼ、チクゼンハゼ、タビラクチなどは、埋め立て、護岸工事、水質汚濁、土砂の流入、底質の有機汚染などにより生息地の一部は消滅し、他の生息地での生息数も激減している。
小笠原諸島のハゼ類
河川渓流域に生息するオガサワラヨシノボリは、1水系のみに比較的多産するが、他の水系では極僅かである。三面護岸により一部の生息地は消失し、他でも渇水、土砂による濁りにより環境は悪化している。





■保全や保護に関連する問題点

ハゼ類は微細な生態的環境に適応して生息しており、そのため、わずかな環境変化でも、その生息に多大な影響をもたらす。
また、仔稚魚の成育する海域、生息地の後背地や、種によっては地下水系などの保護・保全も不可欠である。
したがって、個々の種の保護・保全には微細な視点と同時に、広い視点が要求される。現在、奄美大島のタナゴモドキ生息地での護岸工事計画変更、沖縄島のトカゲハゼ生息地における環境整備やトカゲハゼの人工繁殖、西表島のコマチハゼ生息地が環境省の特別保護区に含まれるなどの保護施策を除き、ほとんどの種で何の保護対策も取られていない。このように、遅れている保全や保護に関連する問題点として次のようなことが考えられる。



啓発活動の遅れ
  環境省及び自治体によるRDBの公刊の遅れや不備によるところが大きい。
正確な産地の科学的記録の方法
  業者やマニアによる乱獲の危険回避のために、産地が通常の方法(誰もが参照できる方法、例えば論文や調査報告書)で公表できないため、地元住民への普及啓発や保護行政への反映に遅れが生じる可能性がある。
生態学的調査研究や生活史の究明の遅れ
  研究者間のネットワークづくりが必要であり、複数の研究者による採集圧増大の抑制にもなる。
絶滅危惧種に選定されたもの以外にも同レベルの種が多数存在する
  イシドンコ(日本本土)、エリトゲハゼ、アサガラハゼ、ヒゲワラスボ、コンテリボウズハゼ、カキイロヒメボウズハゼ、シマサルハゼ、ドウケハゼ、スダレウロハゼ、フタゴハゼ、コクチスナゴハゼ、カワクモハゼ、フタホシハゼ、ホホグロハゼ、ムジナハゼ、ホクロハゼ、ゴマハゼ、ナミノコハゼ、コビトハゼ、ヒメサツキハゼ(以上、琉球列島)など。
絶滅危惧種に選定されたものの中で、琉球列島での個体群がフィリピン方面からの分散によると思われる種が幾つか存在する
  タスキヒナハゼ、マイコハゼ、ミスジハゼ、クロトサカハゼ、ヒメトサカハゼなど。これらの種は、多様な生態的環境を示す自然度の指標として有用である。しかし、日本国内だけで個体群を定義できず、供給源となる地域の保全も必要となる。そのため、国際的な対応が必要である。




主な参考文献

明仁・坂本勝一・池田祐二・岩田明久. 2000. ハゼ亜目. Pages 1139-1310,1606-1628 in 中坊徹次編,日本産魚類検索:全種の同定 第二版. 東海大学出版会, 東京. 岩田明久. 1997. ハゼ類. Pages 155-164 in 長田芳和・細谷和海編. よみがえれ日本産淡水魚日本の希少淡水魚の現状と系統保存. 緑書房, 東京.



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